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新・保護者^2 その6

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「あ。おかえりなさいですおねーさん。今日はお早いんですね?」
「ユキ」
「はい?」
「ちょっと時間いいかな。こっち座ってくれる?」
「え、ええと、なんでしょうかおねーさん、その、ずいぶん改まって……」
「うん。ごめんね、そんなにかからないと思うんだけど、ちょっとだけ大事な話」
 鞄から書類など出しつつ、リビングのテーブルへ。
「は、はいっ……」
 ただならぬ気配は察してもらえたらしい。正装の私につられたか、ユキも神妙な顔をしつつとてとてぺたん、と遠回りしてテーブルの向こうに正座する。
「あ、あの、なんでしょうか……おねーさん」
「……あのね」
 焦らすのはよろしくないと思いつつも、躊躇ってしまう自分に少々嫌気。
 だがまあ、先延ばしにしても済む話じゃあないしなぁ。
「お、おねーさん? あの、なにか、その……わたし、ごめーわくなことを、してましたか? ……えっと、どんくさいですからわたし、気づかないうちにおねーさんを不愉快にさせたり――」
「ユキ」
 名前を呼ばれて、ユキはひぅ、と声を詰まらせる。 叱ったわけでもないのに、ただそれだけで――ユキは身を竦ませて俯いた。
 そして――すぐに、顔を上げて笑顔を作る。ひび割れたカタチだけの笑顔を。
「あ、あはは、そですね、……ごめんなさい。余計なことでしたっ。わたしみたいなおこさまが気を回すのはその、なんですか、ええと……出過ぎましたね。鬱陶しかったですよね。その、ええと……」
 年齢に不似合いな言葉の羅列がぐるぐると巡る。彼女があの苛酷な環境で自分を守るために必死に身に着けてきた処世術は、そうして目にすればするほど歪で、世の多くの人を苛立たせるのだろう。けれどだぶん、ユキはそれ以外に自分を守る方法を知らないのだ。
 そんなもの、決して――必要なものではないはずなのに。
「おねーさん、あの、……えっと……あ、あはは、なんでしょうね、その……あ、わ、わたし、なに言ってるんでしょうね、あはは……」
「ユキ」
 ふう、と吐息。テーブルの上に身を乗り出して、少女の頭にそっと手を載せる。
 びく! と身を竦ませるユキは、けれど、動かない。そうしてはいけないのだと教わったからなのだろう。
 そんな彼女の様子を見ているのは、酷く嫌だった。
 だから覚悟を決めて、私はまっすぐに彼女を見つめ、喉に引っかかっていた言葉をそのまま口にする。

「君のぱんつが欲しい。脱ぎたてが欲しい」

 …………。
 ……。

 ユキのフリーズ時間はおよそ30秒。とりあえずえらく男前な顔だけは保ってみた。
「…………おねー、さん?」
「……(きりっ)」
「っ、あーもうっ!? あーもうぅっ!? おねーさんっ!? きょ、今日とゆー今日はですねっ!? これまでもいろいろアレだと思ってましたけどねっ!? 実は内心わたしも半分くらいはそんなことだろーと思ってましたけどホントここ一番の期待ってのを裏切りませんねおねーさんはっ!? このタイミングはなんていうかいろいろそのですねっ!? もう反省と謝罪だけじゃすまないところだと思うんですがっ!? い、慰謝料とか要求しちゃっても誰にもとがめられないレベルだと思うんですかどもっ!? 真面目な顔してなにを直球ストレートど真ん中にヘンタイさんなことを言ってますかっ!?」
 ……半分なのか。ううむ思ったより信用あるな私。
「大切にする。約束する。家宝にして神棚に置いて毎日拝むから(キリッ)」
「いやですからそこで土下座ってひととしてどーなんですかもうわたしはじめて見ましたよ土下座とかそもそもっ!? やーめーてーくーだーさーいーっ!?!? なんですかその絶望的にあたまのなかのどこらへんかがどうしよーもなくなっちゃってる大切にされかたはっ!? もう冗談ってレベルじゃないですようーっ!?」
「もちろん夜も一緒に寝るから。具体的に言うと寂しい夜のお供に」
「すすすすとーっぷっ!? だからってそっち方面はもっとだめですようっ!? おねーさんお願いですから世間体とかを考えてですねっ!?」
「ユキ(のぱんつ)は俺の嫁」
「あのホントこれ素直な感想なんですけどおねーさんはいちどちゃんと病院行ったほうがいいと思いますよう冗談とかじゃなしにっ!?」
「ああ、つまりぱんつじゃなくてわたし(はいてない)を見てってことね?! 困っちゃうなぁそんなにストレートに(てれてれ)」
「ぁあああもうおねーさんまだお日様でてる時間なのに大暴走ですねっ!? ブレーキどころかハンドルもないですね!? アクセルとアクセルとアクセルしかないみたいなもうっ!?」
「ユキたん萌えー。ふごーふごー(爆)」
「ふごーじゃないですようっ!?」

 概ね。
 3ヶ月に1回ほど、ユキはこうして日頃のストレスを解消しているとかなんとか。


 (続く。)

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