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【天下無双・零】 アルティメット・ランブル編 28

■MASTER SCENE 03/神無木小枝子etc


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「…………」
 溜息をつきたくなる気分を堪え、“眼鏡のサエコさん”神無木小枝子はじっと手を見る。
 彼女は今、眼鏡を外し千早冴子の代役として、機動捜査課の指揮室で課長の席に座っていた。こんなことで実際に機動捜査課への待機命令が解けるわけもなく、いっそ気休め程度のものなのだが、たとえなにも言わなくとも、そこに彼女が居ると居ないでは随分と士気が違うのだと、隊員達は口を揃えて言う。
 小枝子としては、自分が露骨にお飾り扱いされている気分であまり嬉しくない。
 ともあれ、なし崩し的に課長代理を勤めることになった小枝子は機動捜査課に残されたわずかな権限の隙間を最大限に利用して事態の収集を指揮していた。
「課長、木更津の被害出ました。フリーのトーキー経由ですけど信憑性はグリーン。ビルが三つくらい倒壊してるっぽいです」
「なによそれは・……映像あるのね? 解析回して。メモリ巡査、どこ?」
「3時間前にレイさんを止めるって出ていったきりです!!」
「……そう。まったくあの2代目最凶コンビは……。
 よりにもよって課長の留守にこれはないわよね……里美君もキーファー巡査も全然連絡つかないし。なんでウチの連中、こんなに勝手な人ばっかりなのかしら。……ほら芹原さん、一応応援なんだからサボってないで起きて!!」
「……うぃーっす」
 デスクに突っ伏したまま、生活安全課から臨時に派遣されてきた芹原なずなが『起きてますよー』とばかりに手を持ち上げる。だがその態度にはやる気のカケラも見受けられない。
 生活安全課(あそこ)はみんなこんな人ばかりなんだろうか、と小枝子は少々不安になる。何しろあのゼロですらすっかり昼行灯と化した魔の場所なのだ。人をダメにする電波でも満ちているのかもしれない。
「――で、遊月さんと連絡は?」
「それが、まだ。……反応も掴めないんですけど、斑鳩の辺りでロストしてから、全然足取りも追えてません」
「コール続けて。何かあったら報告、お願い。私がいなかったら葵ちゃんに直接でもいいから」
「はいっ」
「サエちゃん、毎日こんなことしてるわけね……。死にそう」
 唯一動けそうな鑑識班の遊月も使えず、他の部下は軒並み現場に出張っている。待機命令中だというのに。普段冴子が晒されているストレスをもろに実感し、小枝子は胃のあたりに重いものを感じて呻いた。
「SSSとの連携は?」
「それがその、担当外のヒトがさっきから回線を占領しちゃってて……」
「あーーー、もうっ!!!」
 外部との連絡の大半を封じられた現在の機動捜査課において、SSSとの回線は貴重な情報源である。それをこともあろうに、SSSの捜査官が私有しているというのだ。
「誰よ!? トラム……? いかにも三下みたいな名前ねっ!!」
 とうとう我慢の限界がきた。
 事実上、現在の機動捜査課の指揮系統は滅茶苦茶。おまけに曲者揃いの隊員達はそれぞれが勝手に現場で動いているらしく、ほとんど統制も取れていない有様だ。いくら小枝子が気を張っても、組織で動けないのでは有効な手が打てるはずもない。
「こんなんじゃサエちゃんに合わせる顔ないよぅ……」
 ついつい、大学以来のあだ名で友人の名を呼び、小枝子は弱音を吐いた。彼女が大変な時だからこそ、しっかりしなければならないと言うのに。
 頭を掻きむしって苦悩していた小枝子の元に、緊急回線でコールが入る。
「じゃあ……って、あ、隊長? は、はいっ、失礼しましたっ!! ……え? 司政官の緊急放送? 生で? ――だ、誰か早くヴィジョン付けて!! マリオネットよ、早く!!」
 小枝子の指示に、指揮室の仮想モニタが一気に拡大された。上等な机を叩き弁舌を振るう司政官、稲垣光平の顔が指揮室いっぱいにひろがる。。
「……えー、然るに、厳重な警備の死角をついてこのようなテロ活動が行なわれたのは誠に如何であり、ただちに事態の収集を行なうべく、対策本部ではブラックハウンドによる鎮圧班を組織いたしました。
 これにより、混乱は48時間以内に集束に向かうこととなります。私は政治生命を賭けてこの緊急事態に対応する所存であり――」
 その内容に、情報捜査官達の間にも動揺が広まってゆく。
「どういう、こと……?」
 高等警察という立場ゆえ、どうしても犯罪に対して後手になりがちなブラックハウンドの内部で、現場での第一対応を行なうために作られたのが機動捜査課のはずだ。今まさに現場で事件が起きているというのに――その指揮権はもはや機動捜査課にはないという。
「サエちゃん……なにしてるのよ……」
 かちり、と回線を閉じた小枝子は、なおも己の政治手腕に付いて力説を振るう司政官の顔を見つめながら、呟く。

 本日一五三〇をもって、本件は機動捜査課より治安対策課へ引き継がれる。
 機動捜査課は以後、待機命令を継続し、治安対策課玄野捜査官の指揮に従うこと。

 御堂茜の隊長署名と千早冴子機動捜査課課長の連名を経て通達された命令は、あまりにも一方的なもので。
 小枝子の心は激しく揺れていた。


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 真性工房のブラックハウンド&警察系所属キャスト総出演、その1。

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