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【天下無双・零】 アルティメット・ランブル編 27

■RESEARCH SCENE 19/鵺野七希&宮坂凱


 ▼

 ――軽い。
 集練気によるウェイト差を考えても、宮坂の拳はあまりに軽い。打ち据えられた一撃は、生身の七希の身体にもさしたるダメージを与えていないようだった。
 だが、疾い。
「ッ……ざけんなぁッ!!」
 怒声と共に振り回した七希の拳は、宮坂のパーカーの裾をちぎり取る。
 それでも少女は未だ、宮坂の身体を捕らえられずに居た。
「――……アンタ、もういいわ。全力で潰してやる」
「やるなら速くしてくれ。本気になる前に倒してもつまらない」
「本ッッ当、笑えない冗談が好きねッッ!!!」
 七希の攻撃を最小限の動作で裁き、内懐に迫ってくる宮坂が放つコンビネーションは、七希の攻撃に比べれば遥かに遅い。ぱぱぱ、と軽い音を響かせ放たれる拳が少女の四肢を容易く撃ち抜いてゆく。
 単純な速度で言えば音速を超過する七希の攻撃が、通用しないのだ。
「肩ががら空きだぞ」
 指摘と共に、少女の腕に宮坂の手がするりと絡み付き、容赦無くねじられる。
 べきり、と鈍い音を立てて七希の右腕に激痛が走り、感覚が途切れた。
 折られたのだ。
「なに、なんなの、アンタ……ッ!!」
「俺は俺さ」
 空を射貫くかに見えた七希の爪先を、軽く弾いてカウンター気味のストレートが七希のみぞおちをえぐる。
「お前を倒す男だ」
 常識的に考えて、宮坂凱という人間のスペックは、打撃戦において鵺野七希のそれを遥かに下回る。射程、威力、速度。全てにおいて七希は人間の常識を超えた才覚を保有していた。
 だから――宮坂は速さではなく疾さを選んだ。
 避けられないのではなく、避けさせない攻撃を。ゾク時代、誰にも追いつかれまいと、がむしゃらに前を目指し続けた自分のスタイルを。
 彼がアキレス伊波との鍛錬で見出した答えはそれだった。
「ちょこちょこ、うざったい……ッ」
「邪魔なら殴ってどかしてみろ。素人」
「ッ、上等ッ!!」
 七希の内懐からぴたりと離れず、己の射程を保ち、宮坂は執拗に攻撃を繰り返す。

 ――相手の攻撃を受けずに、自分の攻撃を当てる。

 古今東西、闘いの必勝法とはこの至極単純な一文に尽きる。この理想の実現のためだけに、人類は数万年以上にも及ぶ闘いの研鑚を積んできた。
 それをもっとも簡単に実現するのが、相手よりも長い間合いの武器を持つことだ。槍、弓、そして銃はその結果生み出された。
 なかでも銃はもっとも効率的に射程を武器とする殺戮兵器。相手の攻撃の届かない距離から自分の攻撃を当てることができさえすれば、闘争など発生し得ない。あるのはただ無慈悲な虐殺。一方的な殺戮だ。
 が。
 絶対的な攻撃手段を持つ、という事実が、そのまま完全性を証明することにはなりえない。銃を持っていても、殴り殺されることがないとは限らない。
 あらゆる間合いを無制限に捉え撃ち抜く攻撃。そしてあらゆる攻撃をまるでものともしない防御。天が少女に与えた二物は、七希から格闘家として必須なものを徹底的に奪い去ってしまった。
 ――それは、致命的なまでの距離感覚の欠如。
 間合いを推し量るセンスの喪失という形で現れるこの弊害は、七希が持って生まれた天稟ゆえの決定的な弱点と言える。
 いかなる間合いも侵食し己の腕の中に捉えることが出来たからこそ、七希は相手の攻撃の間合いから逃れる、ということが理解できなかった。
「っっ……いちいち、鬱陶しいッッ!!」
 空を裂いて放たれる裏拳。打ち下ろし気味の軌道でコンクリートのブロックを地面ごと抉り取る破壊力が、宮坂には通じない。七希の懐にぴたりと張り付いたまま、鋭いショートアッパーが同時に七希の腹を抉る。
 修練気法で編まれた鎧の隙間を撃ち抜いて、宮坂の拳が少女の内臓を掻き回す。
 伊波の教えた寸勁を己が技術へと昇華させ、宮坂凱は地上最強に一歩また一歩と迫ってゆく。
 そしてついに、宮坂凱は七希の魔弾を全て回避し、少女の内懐へと達する。
 ねめつけるような青年の視線に、少女の背筋に戦慄が走る。
「っ!!」
「お前が天才で良かった。そうじゃなきゃ――」
 もしも、鵺野七希がただの平凡な世界最強であったなら。
「こいつは絶対に届かなかっただろうからな」
 己の夢、矜持、誇り、それらを掴み、握り込んで、なによりも固く硬く握り締められた拳が――
 少女の腹を、鉄杭の如く撃ち抜いた。


 →NEXT





 受けは不可能の<守護天使>と、対決:不可でも回避を可能とする<影の護り手>。尊大なまでの<自我>に支えられた天才性を示す二つの特技をもつ七希には、白兵も運動も1レベルもありません。これは同時に、彼女は戦闘が始まるとプロットを捨てて移動する以外に立ち位置を動かせないということになります。
 本来なら一方的に相手を殴り付ける無限の射程の攻撃を持ちながら、一度接敵
すると離れることができないという弱点があるのでした。今回はそこをついた宮坂凱の作戦勝ち。
 アキレス伊波とのやり取りによって戦種(スタイル)を得、ゲストとなった宮坂凱のスタイルは、チャクラ◎ フェイト● カタナ。ゾク時代の封印技能<ロケットスタート>を上回る<※ハヤブサ>で七希の懐に潜り込み、<※二天一流>による<徹し><無明剣><チェックメイト>のコンビネーションブロウが炸裂。
 ダメージそのものは素手のためほぼありませんが、装甲値無効の攻撃が徐々に七希の手札を圧迫してゆきます。しかも<守護天使>では相手の移動の妨害も不可能。
 リアクションでは<警報><※合気>によるカンフマスターによって達成値が上昇。七希の切り札、エクスターミネーターも当たらなければ意味はなく、クロスカウンターで反撃を喰らうばかり。
 離れて距離を取れない七希は徹底的に宮坂の攻撃に押されることになります。彼女も完全に自分ひとりに狙いを絞って戦種を固めた相手との戦いは初めてです。危うし七希。

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