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東方晴天祭

#12/24追記
 参加した皆様、お疲れ様でした。会場かなり寒かったですが、交流させて頂いたサークルの皆様、スペースまでお越しいただいた皆様、ありがとうございました。





 サークルリストも出ましたので告知をば。
 12/23(日)で岡山ドームにて開催されます東方晴天祭にサークル参加します。
 I-12「折葉坂三番地」でお待ちしています。
 東方晴天祭


新刊:「酔々流転の百鬼夜行」 A5折本 16ページ 100円
晴天祭表紙
 博麗神社に居ついた萃香の元に、差出人不明の手紙が届く。鬼を再び妖怪の山の支配者にせんと望む者たちの真意とは――? 鬼と人のささやかな交流がテーマであります。

他に既刊として

「虹と私は離れて遠く」 アリス&魔理沙本 文庫オフセット 348ページ 800円

「袖振り合うも化生の縁」 マミゾウ&橙本 A5折り本 40ページ 100円
をご用意しておりますので、宜しければ是非に。


 ↓以下、サンプルとなります。
 ▼


 歳の瀬迫る十二月。大結界の要たる博麗神社の縁側、冬の日差しが落ちる陽だまりの中に、暖を取る猫のように寝そべって。萃香は愛用の瓢箪に口をつけて中身をぐびりと呷る。細い喉を抜け胃の腑へと落ちる酒精の芳醇な香りを愉しみ、伊吹童子はぷは、と満足げに息を吐いた。
 吐く息も酒気を交えて白く凝る師走の冷え込みの中、肩口で破れた袖からは剥き出しの二の腕が覗いているが、この酔鬼は寒がる素振りも見せていない。
「今年の酒はいい具合に仕上がったねえ」
 普段より丁寧に水と甕を吟味したのもそうだが、何よりも良い酒虫が手に入ったのが効いたのだろう。満足のいく出来栄えに頬を緩め、萃香は再び伊吹瓢に口を付けた。
 ほんのりと色づく頬は酔気にとろんと柔らかく解(ほど)け、小さな唇が瓢の口からこぼれる雫をちろりと舐める。
「……ねえ」
「んぅ?」
 一人手酌で酒を愉しむ酔いどれ鬼へ、頭の上からの不満げな声。萃香がぐいと背を反らせば、不機嫌そうに腰に手を当てた霊夢が仁王立ちになって見下ろしていた。
 いつもの紅白の巫女装束ではなく、髪を後ろで束ね、三角巾に割烹着姿。これも新鮮で良いな、と萃香は思う。
「暇なら手伝いなさいよ、大掃除」
「何言ってんのさ。鬼の前で来年の話なんて滑稽だよ霊夢。それに私の分はもう済ませたよ」
 仏頂面で雑巾を押しつけてくる霊夢に、境内の隅に山と積み上げられた落ち葉を指さし、萃香はけらけらと笑う。能力を使って萃められた落ち葉の山は、見上げるほど大きなものだ。そのうち魔理沙あたりが目をつけて焼き芋でも始めることだろう。
「……あんたがそんなだから妖怪が集まるばっかりで神社の評判も悪くなるの」
「あっはは。元々堕ちるほどの評判もないだろうに。忙(せわ)しいこと言ってると老けるよ霊夢。ほれ、一杯どう?」
 懐から朱塗りの杯を取り出し、並々と酒を注いでみせる萃香に、霊夢は大きく吐息を一つ。
「それ、ほとんど酒精だけじゃないの。そんなお酒ぱかぱか飲んでらんないわよ。鬼(あんた)と一緒にしないで」
 霊夢は呆れ顔で大掃除を再開する。鬼用の酒は人間のそれの比ではない。滅多なことでは酔わない巫女も、さすがに気安く飲めるものではないらしい。
 一献を袖にされた萃香だが、嫌な顔一つ見せず、宙に浮いた盃を口に運び、ぷは、と馥郁たる香りに満足げに口を緩めた。
「……んむ」
 杯の端を咥えて一息。このまま掃除の邪魔をして霊夢の機嫌を損ねるのは宜しくないだろうと考え、萃香は己を疎にして薄め、縁側を離れることにする。
 疎密を自在にする力は萃香には息をするようなもので、そうと意識すれば彼女は幻想郷のどこにでも在ることができた。もともと生まれ持っていた力ではあるが、山を去って長い漂泊の間に、その傾向はより強くなったように思う。
 神社の鳥居の上に、萃香は拡散した己を再び萃めて実体化する。
「大分冷えるね。あちらはそろそろ根雪かな」
 冠を白く染めた妖怪の山を見上げ、納戸から少々、失敬しておいた粗塩を皿の上から小指の爪に乗せて舐める。丸みのある粗塩は素朴ながら、鬼の酒に良く合う酒肴だった。
 酒精をゆっくりと口に含み、時間をかけて喉へと落としてゆく。大結界の端に位置するこの神社からは、梢よりも高く飛べばすぐに幻想郷を一望することができた。
 俯瞰した冬の景色にいつかの日に見た幻想郷を重ね、萃香は満足げに胡坐をかいて伊吹瓢を傾けた。
「……変わらんようでも、変るもんだね」
 思えば、萃香は随分と長い時を漂泊の中で過ごしてきた。妖怪の山を離れ、地底を出、幻想郷のあちこちを巡り、果ては冥界や天界にも足を伸ばした。大結界をすり抜けて外の世界を放浪したこともある。外では妖怪の存在は酷く曖昧で、萃香はほとんどどこにも姿を現す事もできなかったが。
 けれど、いまや伊吹萃香は強く意識してここに居ることを選ぶようになった。それもまた大きな変化であるのだろう。
 赤い鳥居の上、ぶらりぶらりと足を揺すって、穏やかな酔いに己を任せる。ここは萃香のお気に入りの場所のひとつなのだが、神社の顔とも言える場所に鬼が陣取っていることに対して、霊夢はあまり良い顔をされないことが多い。
 案の定今もそのようで、鳥居の上の鬼を見上げて、博霊の巫女は不満げに口を尖らせる。
「ちょっと。宴会の準備くらいしていきなさいよ。あんた、いつも集めるだけ集めて放ったらかしじゃないの」
「あっはっは。鬼は酔うのが仕事ってね」
 茶化すと同時、空を割いて符が飛んでくる。今日の巫女は大分ご機嫌斜めの模様だった。追尾効果付きの妖怪調伏の符から霧へと変じて身をかわしながら、萃香は鳥居を蹴って宙へと舞い上がる。
「悪いね、今日はちょいと先約があるのさ。少しばかり出かけてくるね、霊夢。……宴会までには戻るよ」
 返事はなく、代わりに飛んできたのは封魔針。首を竦めてそれを避け、萃香は疎密を操って、神社からしばし離れた森の中に出現した。
「……さて」
 周囲の気配を探り、誰もいないことを確認しつつ、萃香は懐から書を取り出した。最近流行の郵便封書とは違う、仰々しい竪(たて)文(ぶみ)。差出人の名は無く、書状の表には、かつて妖怪の山を支配していた鬼、伊吹萃香に宛てた名が記されている。
 昨日、萃香のもとに届けられたこの書状は、至急の要件をもって彼女に逢いたい、という至極単純な内容だけが記されていた。
「鏑沢の七本杉ねえ。山の真っただ中じゃないか」
 待ち合わせの場所は、天狗が妖怪たちの支配地域として主張する八つの峠のひとつだ。見知らぬものが入り込めば、ものの数分で鎮台の哨戒天狗大隊がすっ飛んで来ることだろう。そんな場所を指定してきたというのは、それだけでも恐ろしく胡散臭い。
「……どうにも面倒事のような気がするけど、どうなるかねえ」
 いくら怪しいといえども、行かない理由にはならなかった。鬼を相手に、これは冗談では済まされない。書状を畳んで懐へと戻し、萃香は伊吹瓢に栓をして、ぐいと背をひと伸び。
 とん、と地を蹴れば、鬼の姿は霞よりも軽い疎の霧へと変じ、風よりも早く地を駆ける。酔いに任せて拡散しすぎないように気を遣いながら、萃香は一路北西、妖怪の山へと進路を取った。
 一陣の疾風と化した鬼は、山から続く渓流を駆け抜け、冬後森の準備を始めた河童たちの集落を見降ろし、まだ紅葉の名残を残す九天の滝で梢を揺らして、妖怪の山の山麓へと身を躍らせる。
 雪を頂く山は一足早く冬の気配を覗かせていた。山の中腹では積雪こそまだないが、霜柱が凍らせた地面は硬く軋み、かと思えば日差しの下でぬかるんでいる。渓流に張り付く白い霧は、手足を凍えさせるほどに冷たい。
 冬にあっても莫大な水量をもって流れ落ちる瀑布の周辺には、今日も神妙な面持ちで白狼天狗達が哨戒任務にあたっていた。
(……うむ、お勤め御苦労)
 悪戯っぽく口元を緩め、萃香は己の気配すらも極限にまで疎に薄め、十重二十重の厳重な白狼天狗たちの警戒網を気付かれることなくすり抜けていく。
 山を登ってゆくにつれ、標高とともに植生も変化してゆく。赤や黄色の色鮮やかな落葉樹は姿を消し、冬でも黒々と葉を茂らせる杉林が静謐に立ち並ぶ。やがてそれらも姿を消し、森はいよいよ人の手の入らぬ古代の姿へと変じていった。
 萃香が十人手を繋いでも取り囲めないほど太い幹をした古木の間を潜りぬけ、鬼は待ち合わせの場所へと辿りついた。
 時刻まではまだ半刻ばかりある。急ぎすぎた――という訳ではない。萃香は最初からここで相手を待っているつもりだった。
 己の背丈の十倍もあるような大岩の上に陣取って腰を落ち着け、萃香は再び腰の伊吹瓢を手に取り、トンとその底を叩いた。溢れだした酒を口に含み、ぐびりと呷る。
「さて、退屈しないことを願いたいね」
 そう言う鬼の表情は、どこか楽しげなものだった。


◆ ◆ ◆


 徐々に深まる霧の中、刻限よりも少し前になって、待ち人は白霧の向こうから姿を現した。
 数は三名、いずれもが天狗。それぞれが顔をすっぽりと覆う面を着けていた。
 中央に立つのは濡れ羽色の翼をした鴉天狗。左右に従っているのは刀に盾を携えた白狼天狗だ。流石に抜刀はしていないが、胸当てに面頬、手甲脚絆の戦装束。鎮台はいつから戦時体制に入ったのだろう。
「お待たせ致しました。お早いお付きで」
「ふん、詰まらない嘘をつく」
 萃香は頬杖をついて天狗たちの姿をにらみ付けた。名乗ることもなく、顔を隠しているのは、自分達の勢力と出自を悟られないためと、自分達がひとつの勢力であることを誇示するためだろう。
 白狼天狗の元締めは犬走の長だったはずだが、その彼等が鴉天狗と同じ装飾の面をつけていることからも、少々天狗の常識とは外れた集団と言えた。
「鬼を侮るなよ。私が気付かないとでも思ったのか?」
「御気分を害されたのであればお詫びいたします。ですがこれも、全ては大義のため。どうか平に、ご容赦を」
 猜疑心と警戒の強さは天狗の十八番だ。どうせ刻限になるまでずっと遠くからこちらの様子を窺っていただろうに、彼らは今しがたやってきたとばかりの態度をとっていた。そんな建前も、いちいち鬼の気に障る。
 先頭に立つ鴉天狗――声の調子からするに女だろう。萃香は既に妖気を薄めることをやめていたが、そんな鬼を前にしても物怖じする気配はなく、落ち着いたものだ。
 ……もっとも、人前で虚勢の一つも張れない天狗など、とてもあの妖怪の山では生きていけないだろうが。
「このような場でお迎えすること、お赦し下さい。事は内密に運ばねばなりませぬので」
 これも嘘だ。萃香は既に己の気配を隠していない。山の警備がよほどの節穴というのでもなければ、鎮台の警備はとっくに萃香のことを察知している筈であった。少なくともこの面会の間は哨戒大隊が現れないことは織り込み済みなのだろう。彼らはそうして、この峠を支配下に置いていることを言外に示しているのだ。
 いざ決裂となれば、ここにいる使者たちの口を塞いで、鬼が偶然にも、再び妖怪の山へと現れたという体を取るつもりなのだろう。つまらない小細工だと不機嫌になりながら、萃香は岩倉上に胡坐をかく。
「不羈奔放の古豪、伊吹萃香様。まずはお越しいただいたことを感謝いたします。この度は――」
「ああ、止しな」
 烏天狗の口上を遮るように、萃香は手を翳す。
「こんな寒々しい場所で長々とお前さんの世辞と挨拶を聞いたところで、私はちぃとも愉しくない。さっさと本題に入ろうじゃないか。……こんな事をして、お前さんたちは私に何がさせたい?」
「かつての妖怪の山の秩序を取り戻すのです。現在のような欺瞞に満ちた支配を糺(ただ)し、堅固にして強靭なる秩序を、再び御山に齎す時が来たのです」
 強めた鬼の視線に動じることもなく、淡々と面の鴉天狗は目的を口にした。
 博麗大結界ができるよりも以前、妖怪の山には鬼を頂点に抱いた、ピラミッド型の支配体制があった。彼女達はその再現を望む一派であると自称する。
 つまり――彼等は、萃香に再び山の頂点に立ち、統治を振るって欲しいと申し出ているのだった。
「へえ」
 彼女達からは視線を切らずに、萃香は伊吹瓢を傾けて酒を呷る。
「意外だね。お前たちはもう、私達鬼の事など邪魔にしているのだろうと思っていた」
「遺憾ながら、今の御山ではそう考えている者は多いでしょう。……ことに、いまの上層部には」
「当然だろうね。大天狗どもも、天魔も、折角労せずして手に入れた支配者の地位を、誰が好んで渡すのかってことだ。窮屈な上もいなくなって、ようやく好き放題できるってのに」
「我々はその現状を憂いています。萃香様のお耳には届いていますでしょうか。昨今、多くの信仰を集める者たちが立て続けにこちらへとやってきました。彼等は多くの者たちの信仰を競うように集め、その権勢を日に日に増しているのです」
 努めて冷静を保とうとする彼女の口調が、感情のぶれを見せる。やはりどこか青い。さほど年をとっていない若い天狗だろうと萃香は推測した。精々が百か二百。結界ができる頃のことを見知っているかどうかは怪しいだろう。
「そのために、妖怪の山も備えなきゃならないと? しかし確か、天狗達は守矢の二柱を信仰していたろう」
「ご存じでしたか。表向きはそうなっていますが、相互に利があるから協力をしているに過ぎないことは、羽根の生え揃わない赤子でも知っています。そも、妖怪が神を信仰するなど笑止千万。どこからも距離を保って孤立してしまうならば、いずれかの勢力と繋がりを持つことで、他の派閥の情報を得ることができるという程度の浅慮でありましょう。
 そのような無様な姿、もはや看過できません。伊吹萃香様。どうか――再び、我らの長に」
 彼女の言葉は、言外に今の山の支配体制を強く批判していた。かつてのように恐れ、畏怖され、遠ざけられた異郷としての『山』の在り方――畏敬と崇拝を持って迎えられた山の主のような信仰を、彼らは求めているのだ。
 その象徴として、かつて山の頂点にいた鬼が、今再び必要とされている。
「ふむ……」
 山でも古参の妖怪、特に鬼の直接の配下だった年寄り連中の天狗達は、総じて鬼の支配を嫌っているものだが――若い天狗達だけが若さに逸って起こした行動にしては少々、手が込んでいると言えた。
(一人二人、冷や飯を食わされている大天狗あたりが後ろ盾をしている――のかね)
 酒を傾けつつも頭の一部を冷ましながら、萃香はそう推論した。こんな酒の呑み方は窮屈で仕方がない。額に皺が寄るのを自覚しながら、萃香はさらに酒を口に含む。



 ………………。
 ………。



 

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