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最近の東方小説系同人誌感想。

◆からかさ本舗
「香霖堂備忘録 ~残暑」
「香霖堂備忘録 ~動物記」


 原作香霖堂の雰囲気を見事に表現した短編集。蜃気楼の話とか菊の話とかは自分もやったことのあるテーマだったんで、こんな切り口があるのかと感動しつつ、自分では思い至らなかった解釈に唸らされました。
 妖怪や道具に関しても古典や文献にまつわる大量の知識が丁寧に調理されていて、なるほど物事の胡散臭い蘊蓄を語らせる上でいかに霖之助が良い立場に居るのかを再確認。
 ……もし次にご挨拶する機会があったら、幻想科学ティータイムとかメレトリックス・ルソリアあたりを持ってお伺いしたい。


◆Abysmalhypogeum
「アリス・マーガトロイド著 月々抄 ~ Impeccable Night.
 フランドール・スカーレットの第二次月面戦争 ~ 蝙蝠のクォリア」


 長いタイトルですが本文も分厚い。495頁は圧巻です。「パチュリー(パチョリ)の精油で香り付けした栞」付きという、嗅覚からのアプローチを試みた一冊という、非常に意欲的な取り組みもしています。会場で足を止めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 内容は、昨今非常な多岐にわたるようになった、旧作からwin版、書籍、漫画版、CD、その他もろもろの膨大で複雑極まりない公式設定を、これまた膨大極まりない(現実世界の)史実や数学、考古学、歴史学、言語学、果ては音楽や詩に至るまでの多面的な知識と合わせて再構成したという、まさに怪作、快作と言ってよい一冊。
 恐ろしいまでもの広範な知識と入念な調査に基づいて、旧作から儚月抄終了までの出来事を、紅魔館の住人と悪魔の妹フランドールの視点から書きあげた内容となっております。原作で明らかに矛盾しているとされる設定についても、見事なまでの解釈で描写し、それを追いかけているだけでも楽しい。現実世界のあれこれに絡めた皮肉の利いた言い回しも素晴らしい。
 酔っ払ってばかりの「白馬のおじ様」とか、共産主義という名の怪物やベルリンの壁をフランちゃんが壊していたという解釈は愁眉でありましょう。
 作中の立場として、また前書きやタイトルを見る限り、アリスがメタ視点に立っているのは、やはり「上海アリス幻樂団」の名前故でありましょうか。そう考えると美鈴が物語中において独特な立場に居るのもなんとなく推察できそうな気がします。

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