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C82参加情報・他

#8/13追記
 参加された皆様、暑い中お疲れさまでした。
 持ち込んだ分は既刊・新刊含めて完売となりました。
 文庫のほうはとらのあな様に委託をしていますので、よろしければそちらをご利用いただければと思います。





 8/11のC82 2日目にサークル参加します。
 東6ホール ト-05a「折葉坂三番地」でお待ちしています。

新刊:「鉱石ラヂヲに天狗は奔る」 A5折本 32ページ 100円
 表題作を含む、ラジオ放送にまつわる短編連作です。あやあきゅ、蓮メリなど多数取り揃えております。
 C82表紙
 今回の表紙には四季悠々さん、きんぎんさんの素材をお借りしています。


 ↓ 以下、C82新刊のサンプルとなります。
 ▼

 今年の春の事になる。
 長らく続いた幻想郷縁起改版(東方求聞口授、好評発売中。)の校正作業にもようやく目途が付き、あとは印刷を残すのみとなった三月某日。久方ぶりののんびりとした朝を迎えた私が穏やかな陽射しに暖をとりながら寝そべっていて午後の読書を楽しんでいた私の元に、一陣の風が吹いた。
 突如現れた来訪者は、庭にびょうと旋風が渦巻かせ、突風とともに障子を蹴散らして部屋の中へと飛び込んできた。
 観音開きのように吹き飛んだ障子から慌てて湯呑みと茶菓子を避難させる私の前で、折角揃えていた幻想郷縁起改版の原稿が紙吹雪のように舞い、部屋中へと散乱してゆく。
 旋風に黒い羽根を散らし現れたのは、一人の鴉天狗。
「阿求さんっ!!」
 細い肩を怒らせ、彼女は背中の黒翼もそのままに私の肩を掴むように詰め寄ってくる。鼻筋の通った整った顔が近づき、深山の緑を思わせる穏やかな香りがふと鼻を掠めた。
 里に最も近い天狗、射命丸文。
 私とは旧知の間柄にして、同じ文筆を宗とするものとして少なからぬ共感のある友人の一人である。幻想郷最速を標榜する彼女が、天狗の中でも特に人里に近しく、取材と称して当宅を訪れては、お茶などを催促することは珍しくはないが、今日の来訪は些か忙しなくも騒々しすぎた。
「これは一体どういうことですか!?」
「どう、と申されましても」
 口角泡を飛ばさんばかりのその剣幕に、顔に張り付いた原稿の一枚を剥がしつつ応じる。
 長じた妖怪の常として、いつも余裕を保ち、時に皮肉めいた言い回しを好む彼女には珍しく、冷静を欠いているようだった。背中の黒翼も仕舞い忘れたままだ。
「ご一緒にお茶でも、という雰囲気ではありませんね」
「惚けないでください、これのことですっ!!」
 ぐっと突き出された手の平には、飴玉を包むような小さな油紙。その中には黄金色に輝く、小さな立方体が覗いていた。
 一辺が一糎(センチ)程の金属塊をを一握り、一〇個ばかり握り締めて、文さんはきりりと整った眉を吊り上げる。
「阿求さん、まさかあなたが知らないとは言わせませんよ! どういうことか説明していただけましょうか!」
「はあ」
 ……ひとまず、概ねの事情は理解できた。
 とは言え、滅多に見れない鴉天狗の取り乱し方に、とりあえず私は空とぼけて彼女の差し出す金属片を覗き込み、はてと首をかしげて見せる。
「……ふむ、文さんも鴉天狗だけに光りモノには目がないんでしょうか? 千年以上も生きていても、やはり妖怪変化の性は業が深いということでしょうか。これは知りませんでしたね」
「そんなことで誤魔化そうったってそうはいきませんからね!? 何の裏付けもなしに私がここまで来るとでも思ってるんですか!?」
 文さんはさらに懐から取り出した数枚のチラシを、机の上にどばんと叩きつける。

 ――『幻想郷ラヂヲ放送局』近日開局!

 色鮮やかなインクの匂いとともに、紙面にはそんな文字が踊っていた。
「なんなんですかこれは一体!」
 文々。新聞特務記者、射命丸文の悲鳴が、邸内に響き渡った。


 ◆ ◆ ◆


「一体どこの誰がこんな極悪非道なことを企んでいるんです!!」
「極悪非道て」
「極悪非道に決まってるでしょう!!」
 正直に答えたらそのまま取って食らわんばかりの剣幕で、彼女は叫び――ばんばんと机を叩く。
 まあ、いつかこうなるだろうと危惧していた事ではあり、概ね予想通りの展開といえた。
「悠長な事を言っている場合ですか!? これは幻想郷の文化を脅かす一大事ですよ?! まさか阿求さんがそれを黙って見過ごそうなんて、人里の責任役としてその態度を問われます!」
「――ちょっと落ち着いてください文さん」
 顔に唾が飛びそうな程の剣幕でまくしたてる文さん。いつの間にか襖に背中が触れるくらいまで詰め寄られていた。息のかかるほどに近い彼女の顔を押しのけ、その場に座らせる。
 土埃で割と台無しになった茶菓子の皿を(珍しい洋風のケーキだったのだが、残念)、心惜しくも卓の上に戻し、女中を呼び付けてお茶の用意を申しつける。
 まだ何か言いたそうにしていた文さんも、さすがに年経た妖怪として余裕と礼儀を欠いていたことに気付いたか、ふうと深呼吸をして胸の中の重い空気を吐き出したようだった。
「……失礼、取り乱しました。お恥ずかしいところを」
 確かに滅多に見れない慌てようではあったと思う。
 今なお、上辺は冷静を取り戻したように装ってはいるが、なお彼女の背中では仕舞いきれていない羽根の先端がぱたぱたと忙しない。妖怪というのも大変だなあ、とまるきり他人事で思いながら、程なく用意された栗饅頭と熱い渋茶を前に、私は改めて卓に向う。
「少々要領を得ませんが、大体分かりました。お話を総合するに、文さんはこの」
 チラシと、その上に並べられた金属塊――ラジオの受信端末に用いる黄鉄鉱の鉱石を指差し、
「ラジオ放送が人里に普及することで、新聞の売り上げに影響が出ることを危惧していると?」
「そ、そんな事は言っていません」
 きっぱりと言い切り、形の良い顎を見せるようにぷいと顔をそむける文さんだが、胸の内の焦躁は面白いくらいに見て取れた。基本、いつも人を食った態度の(性的な意味ではなく)文さんにしては珍しい。
 山の妖怪が河童の技術による活版印刷を始めとした(別に洒落ではない。)高度な技術を有し、鴉天狗がこぞって報道に身をやつし、新聞を作っては購読者の数で成績を競うなか、多くの天狗たちの新聞が妖怪の山社会の妖怪達だけを対象にしているの対し、文さんの文々。新聞は人里でも配られる数少ない新聞だ。
 記事の程度はどうあれ、執拗な勧誘に悪感情を抱いている人間ばかりではなく、月に二、三度の割合で配布される新聞をそれなりに楽しみにしている者もいるのだ。表立って口にすると、もともと高い天狗の鼻が尚更高くなるので面と向かってそんな事をするものはいないのだが。
「ええ、無論ながらそんなものがどう広まろうと私にはまったく関係のないことです。関係のないことですとも」
 二度繰り返してから、文さんはわざとらしく咳払いをした。その上でちらちらとわざとらしくこちらに視線を送ってくる。
「しかしですね阿求さん。貴方もご存じとは思いますが、報道というのは非常に繊細かつ慎重な職務なのですよ。日々、留まることなく変化し続ける情報を扱うことには極めて慎重かつ複雑な判断を要求されるものなのです。時に権力や政争の道具にされることも然り、誤報が原因で事態をより拗れさせる要因となることもあります。一時も休まることなく、幻想郷の在り方すら左右しかねない重要な立場なのですよ? それを一朝一夕に、こんなにも軽々しく――ラジオだなんて」
 まるで親の仇でも見るように(天狗に親がいるのかは鋭意調査中だ)、チラシを睨みつけ、ばんとその上に白い手のひらを叩きつける。
「迂闊にこんなものに手を出して、もし何かの間違いがあったらどうするつもりですか!!」
「ふむ。つまり、心配してくれているということで良いのでしょうか?」
 本音が良く透けて見える言い分だったが、文さんはそうですそうですとばかりに勢い込んで頷く。
「まったくその通りです。阿求さんはもう少しご自分の立場を考えて頂きたいのですよ。だいたい、私にも気づかれないようにこっそり河童まで巻き込んで、よくもまあこんな大それたことを……!!」


 ……………。
 ………。

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