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【東方】袖振り合うも化生の縁・8

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 ナズーリンは不愉快そうな表情を隠そうともせずに、ロッドの先端を橙に突きつける。
「境界の賢者、すきま妖怪八雲紫の式の式! 大方、聖の不在を狙って悪巧みでも仕掛けに来たというところかな。この寺が妖怪に甘い事を知って、正体を偽れば潜り込めるとでも踏んだんだろう」
「違うよ、私は、そんな――」
「まだ惚けるつもりかい、調べは付いているんだ!」
 問答無用とばかりスペルカードが提示される。ナズーリンの周囲に顕現したペンデュラムが轟音を立てて旋回を始めた。
 弧を描くペンデュラムの隙間を潜り抜けながら、橙は焦りを滲ませる。
 黙ってやられるわけにはいかない。しかし反撃には打たれた式を使わねばならず、それでは自分から正体をバラすようなものだ。
「さあ、白状してもらおうか! いったい何を企んでいる!」
「ッ~~」
 苛立ちを露わに牙を剥いて、橙が叫び返そうとした時。
「……境内で何をやってんのよ」
 声とともに、大量の水が二人を包みこんだ。
「ぷあっ!?」
「にゃ!?」
 獣の本能が水を恐れる。委縮した体が自然と丸まり、橙は目を回してしまう。
 付いていた式が見る間に剥がれ、流水にさらわれて雲散霧消してゆく。
 冷たい水は溢れだしたときと同様、あっという間に引いて行った。 ナズーリンとまとめて押し流され、びしょ濡れになった橙はぶるぶると首を振って飛沫を飛ばす。
「ムラサ船長、何を――」
「落ち着きなさいっての」
 呆れ顔の舟幽霊、村沙水蜜が柄杓を返し、ぱしゃんとナズーリンの顔に水をぶつける。
 文字通り濡れ鼠の彼女が目を白黒させる前に、爪先を立ててしゃがみ、その顔を覗き込んだ。
「あんたね、こんな所で弾幕なんてちょっとは周りのこと考えなさい。聖がいないんだから、尚更気を使うべきでしょうよ」
「しかし――」
「ナズーリン」
 隣に控える寅丸の視線で、ナズーリンの反駁はすぐに消え失せた。
 橙の方を見、しかし小さな賢将は大きな耳を動かして、
「幾分、感情的になっていたことは確かだけれど」
 猫が相手だとしょうがないだろう、と小さく口の中で言い訳をし、
「調査自体に私情は挟んでいない。その子がマヨヒガに住む、八雲紫の式の式であることは間違いないんだ。それを隠してここにやって来たことは、十分に疑義を挟む余地のあることじゃないか?」
「……ふむ」
 もっともな理屈ではあった。居合わせた妖怪たちの視線が集まる中、橙はいよいよ後をなくしてしまう。 
(ど、どうしようっ……)
 痛くもない腹を探られるのも問題だが、動機こそ橙個人のものとは言えナズーリンの指摘は概ね当たっているのだ。そして、仮に橙が自分の独断だと主張しても、妖怪の賢者の式の式という立場は、それだけで十分に主の非になりうる。
 剥がれた式は役に立たない。一番いいのは今すぐに逃げ出すことだが、式のない状態でそれが可能とは思えなかった。次の手段は藍に助けを求めることだ。式が剥がれたことは主にも伝わっており、その様子を見に来る可能性もある。
 けれど――喧嘩別れになった主人を、自分の未熟を棚に上げて呼べと言うのか。
 橙にだって、ちっぽけな二股尻尾にかけて、譲れないことはある。
「ああ、待て待て。ちょいといいかの」
 助けは全く予想外のところからやってきた。
 人垣をかき分けて姿を見せた、眼鏡の妖怪が割って入る。
「――マミゾウ?」
「この件、儂に預からせて貰えんか?」
 茶目っ気たっぷりに、ふさふさとした縞模様の大きな尻尾を揺らし、二ツ岩の古狸は橙が全く予想していなかったことを言ってきた。


 (続く)




 久々に続き。読み返してみるに無駄が多いなこの話。
 明確な続きものをその場で場当たり的に書いてるとこうなるのか……

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