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【東方】袖振り合うも化生の縁・6

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「……なるほど。身に覚えのない咎で性質の悪い人間に追われていたところ、妖怪を救う聖の話を聞きつけ、かの妖怪寺が一体どんな場所か様子を見に来た、――と。
 一応、筋は通っているね」
「う、嘘なんかついてないよ」
 境内に座らされた橙を、じっと取り囲む寺の妖怪達。
 あまり歓迎されている雰囲気ではないのは確かで、ちりちりと尻尾の先が焦げるような緊張感の中、橙は即興で、自分の哀れな身の上と、噂の妖怪寺にやってきた理由を一席、ぶちあげる羽目になった。
 こうなってしまった以上、なんとかしてこのままこの寺に潜りこんでしまおうと、橙は腹を決めていたのである。
(――藍様の足を引っ張っちゃうわけには、いかないもんね)
 ざっと見渡した中には、化け狸の姿は見当たらないように思えたが、なにしろ化けることにかけては狐よりも優れたともされる妖怪だ。油断はできない。
「ムラサ船長、一輪、どう思う?」
「うーん……」
「……そうねえ」
 しかし反応は捗々しくなく、周りの反応は半信半疑――四信六疑といったところ。
 中でも一番、警戒を強めているのはナズーリンという鼠の妖怪だ。不信感を隠すことなく、大きな耳を揺らしてじいっと橙の顔を覗きこんでくる。仮にも猫と鼠という関係も忘れ、気圧されるままに、橙は硬い唾をこくりと飲み込む。
「こら、ナズーリン。そんな不躾なことばかり言うものじゃありませんよ」
 助け船は、すぐその隣から来た。
「ご主人様。ですが、こう新顔ばかりだと――」
「命蓮寺は来るもの拒まずです。聖は後で私から説明しますから。……橙さんと言いましたっけ?」
「は、はい」
 寅丸星と名乗った彼女は、そっと身をかがめ、橙に視線を合わせ、にこりと微笑む。
 虎と猫。種族の格の違いを一目で感じさせる、威厳ある振る舞いに、橙は思わず背筋を正す。
「私の一存だけでは決められませんが、どうかそう固くならずに。いろいろ辛いこともあったのでしょうが、もう安心です」
 そう言って、星は優しく、橙の頭を撫でた。
 訳もなく子供扱いされて、少しくすぐったいのと――気恥ずかしくて。橙は俯いてしまう。
「……むう」
 それを見たナズーリンが不機嫌そうに眉を潜める。
「いいのかい、本当に。勝手をして」
「いいんじゃない? 表だって反対する理由もないもの」
「……まあ、ぬえが驚かしちゃったことについては謝らないといけないよね。あとでとっちめて聖にお説教、お願いしようかな」
 口々に、皆が立ち上がる。

「「「「命蓮寺へ、ようこそ」」」」

 声を揃えての歓迎に――
 橙は内心、えらいことになっちゃったなあと思いながら、ぎゅうっと落ち着かない胸元を握り締めた。


 (続)




 自分でも驚くくらいテンポ早いなあ。
 むしろ普段が書き過ぎで、こんなくらいのほうが良いのかもしれないけど。

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