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【東方】袖振り合うも化生の縁・5

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 驚く暇もなかった。
 迂闊にも飛び上がってしまった先に、爪を立てる枝はなく。バランスを崩した身体は背中から宙へと倒れ込む。飛べばいいんだなんてごくごく当たり前の発想も出てこないまま、橙は枝の上から転げ落ちる。
「うにゃあああ!?」
 猫の本能が身を捻って体勢を整えようとするが、人間の女の子のサイズでそれをするには時間が足りない。
 かくして橙は塀の上から寺の敷地へとダイブ。どしんごろごろずるべしゃびたんっ、と掃き清められた境内を突っ切って、虫干し中の座布団の山に頭から突っ込んだ。
「あぅぅ……」
 頭から地面に突っ伏して目を回す橙に――
「ぷっ、くくく……くくくっ、ぎゃーっはっはっはっはっは!!!」
 宙空からけたたましい笑い声が響く。
 くらくらする頭を持ち上げて空を見れば、そこには上下さかさまになって胡坐をかき、腹を抱えて笑う藍の姿があった。
「っはははっ、カッコ悪ー。猫のくせにまともに受け身もできないの? 驚いちゃってまあ、あー、可笑しいっ。ねえ、今どんな感じ? どんな感じっ?」
「……藍、様?」
 牙を覗かせ、目に涙すら浮かべて笑いながら、藍はさかさまに橙の顔を覗きこんでくる。
 普段の落ち着いた物腰とはあまりにも違うその姿に、橙が呆気にとられていると――藍は、なおも笑いながら、突如ずぶりとこめかみの辺りに自分の指を突っ込んだ。
「……!?」
 あまりの事にもう声も出ない。
 藍はそのまま、ぐりぐりと頭の中をこね回してしばし。やがてずるりと抜かれた指には、二十センチほどの小さな、翼の生えた蛇のようなものが握られていた。
 同時に藍の姿がゆらりと歪み、見たこともない黒衣の少女へと変貌する。
「こら、ぬえ!! またアンタはそんなとこで!!」
 境内の向こうで、尼僧姿の妖怪が声を上げた。
「待ちなさいっ」
「待つもんか!! ばぁーかっ」
 尼僧が手に握った輪を振るい、入道を呼び寄せて黒衣の少女を追い掛けさせる。
 封獣ぬえ――背中に非対象の羽根を持った少女は、きししと口元に牙を覗かせて笑い。
 橙を見下ろして、べぇーっ、と思い切り大きく舌を出してから、どこへともなく姿を消した。

 (続)




 書いたことない子ばっかりなんでなかなかキャラ付けが安定しませんな。
 ぬえちゃんはちょっと下品で粗野な感じの方が可愛いと思います。

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