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大⑨州東方祭4

#7/26追記
 当日はスペースまでお越しいただきありがとうございました。
 既刊は完売となりました。新刊「神様のつくりかた。」についてはC80でも頒布予定です。


大9州応援バナー
 来たる7月24日(日)に開催されます大⑨州東方祭4に参加します。
 「非-20 折葉坂三番地」にてお待ちしています。

大⑨州4新刊

◆新刊:「神様のつくりかた。」A5折本、24ページ 100円
「神奈子様、諏訪子様!! 見てください、赤ちゃんができました!!」
「「早苗ェーーーーーッ!?」」

 守矢神社の風祝さんにお子様が誕生した模様です。
 ……一般向けであります。念のため。

 既刊は例大祭でほぼ完売状態なので、「ケイヴァーリットの多世界解釈」だけ持って行く予定です。


 ↓以下、サンプルとなります。
[一]


 深緑の木々を揺らす心地よい山の風が、衣から覗く素肌を撫でてゆく。幻想郷を眼下に望む妖怪の山、その山頂に構えられた社殿には、初夏の暑さもいまだ遠い。
 守矢神社の境内には、そこに祀られる二柱の凸凹神様と、白黒の魔法使い、そして紅白の巫女の姿があった。
「というわけでご飯を奢ってもらいに来たわ」
「来たぜ」
「「帰れ」」
 胸を張って飯をたかるという高等技術を披露する二人に、神様二人は声を揃えて言い返す。
「なんだよ吝嗇(けち)臭いなあ。見ろ、霊夢なんかもう二日も白湯(さゆ)しか飲んでないんだぞ」
「えへん」
「そこで何故誇らしげなのかさっぱり分からないんだけど」
 悪びれる様子もない霊夢に、諏訪子はげんなりとした表情でつぶやいた。神奈子もまったくだと頷き、魔理沙の方に視線だけを向ける。
「……そっちの魔法使いは今に始まったことじゃないが」
「おいおい、酷い扱いだな?」
「あー。ともかく! 巫女が自分とこの神社ほっぽり出して何をしてるんだ」
「だって、ここに来ると黙っててもご飯が出てくるんだもの。おまけに涼しいし」
 巫女としてどうなのかと思われる実に現金な台詞に、魔理沙までもがうんうんと深く頷く始末。
 神奈子は顔を覆って天を仰いだ。
「つくづく世も末だな」
「だって、神様へのお供え物を私が食べちゃう訳にはいかないでしょう」
「そこへ行くと、ここには名目通り神様が手足口と揃ってましますからな、ご相伴に預かるには丁度いいわけだ」
「……私達の食い扶持にたかるのはいいってわけ?」
「余所は余所、うちはうちよ」
 半眼の諏訪子にきっぱりと答える霊夢。後ろめたさの一つも感じさせない言動に、博霊の巫女の底知れなさを改めて思い知る二柱だった。
「やめとけ諏訪子、こりゃもう何言っても通じそうにない」
「……そだね」
 神奈子が首を振り、諏訪子もがっくりと肩を落とす。
「よし、許可が出たな」
「そうね」
 魔理沙と霊夢はいえー、と笑顔で手を打ち合わせると、ぽいぽいと靴を脱ぎ捨て、縁側にあがりこんだ。慣れた手つきでお茶の用意を始める二人に、神様二人顔を見合わせは揃って重く深い溜息を吐く。
「まったく、神にたかるとは実に傲岸不遜な」
「何言ってるの。神様なんだからお願いの一つや二つ気前よく叶えなさいよ」
「で、今日の晩飯は何だ?」
 冷えた麦茶を揃って飲み干し、軒下の日陰の中に素足を伸ばし、すっかりくつろいだ様子の二人。
「……あーうー。暑いからさっぱりと、素麺にでもしようとか言った覚えがあるけど」
「えー? もう少し脂気の強いものがいいわね」
「晩飯たかりに来た分際でその図々しさはある意味羨ましい」
「ふむ。そういえば早苗はどこだ?」
 こんなときにはまず割って入ってくるだろう守矢神社の風祝の姿を探す魔理沙。
「朝早くから出かけていったよ。今日も里の方に用事があるんだそうだ」
「最近帰りも遅いよねえ。熱心に信仰を集めてるみたいだし」
「どこかの巫女にはぜひ見習って貰いたいものだな」
 博霊神社に加え、命蓮寺と言う強力な対抗馬が現れる中、守矢神社も積極的に信仰獲得に乗り出している。妖怪の山の山頂という立地に加え、社殿に括られているためどうしても行動に自由の利かない二柱の代わりに、人里の信仰の多くは早苗が中心となって集めていた。
 そこここに分社を建て、教えを説き、妖怪退治に東奔西走。一陣の風とともに颯爽と現れ、異変を解決したり解決しなかったり、時には騒動をいっそう混乱させたりして疾風のように去ってゆく守矢神社の風祝は、もはや幻想郷の風物詩であった。
「このところ、良いことがあったみたいでなんだかやけに機嫌が良かったようだが――」
「……また? なんだか嫌な予感がするわね」
「心外だねえ。まるで私達が何か企んでるみたいじゃないか」
「みたいじゃなくてそうなのよ」
 不満げに口を尖らせる諏訪子に、霊夢がぼそりと釘を刺す。ここ最近の騒動の、割と大半が守矢神社のせいであるのは良く知られている話だ。
「早苗も随分馴染んだもんだな。こっちに来てからも結構経つから、当たり前っちゃそうなんだろうが」
「少しばかり馴染み過ぎじゃないかと思うがな」
 神奈子は腰に手を当て、眉間の皺を深くする。
「人里での覚えが良くなるのは分からんでもないが、袴の丈も短くするし、髪も弄るし。装飾品まであれこれと。巫女としていかんだろう、あれは」
「いいじゃないさ。女の子なんだから、少しくらいお洒落したって」
 外見(そとみ)のことなんてお互い言える格好じゃないんだしさ、と諏訪子。
「いーや。こういうのは最初が肝心なんだ。悪い虫でも付いたらどうする? 大体だな……」
 巫女の在り方についてあれこれと言い争いを始めた二柱を見、霊夢と魔理沙はお茶受けの水羊羹を口へと運ぶ。
「あむ。……ああいうのも親馬鹿って言うのかしらね」
「ま、信仰が増えるのは悪いことじゃないんだろ」
「……そこでなんでこっち見るのよ」
「いやあ。他意はないぜ?」
「…………」
 半目の霊夢が無言でちゃきっと匙を手にすると、魔理沙も水羊羹を庇うように立ち上がる。こちらでは実に意地汚い争いが始まろうとしていた。
 そんないつもの夏の日常が繰り広げられる境内の中、爽やかな風が軒先の風鈴をちりんと揺らす。
「ただ今戻りましたっ」
 中庭に落ちた声に皆が顔を上げれば、そこには渦中の人となった早苗の姿があった。
 守矢の風祝は白青の巫女装束を靡かせ、涼やかな風を纏いながら庭へと着地する。
 こちらに来たばかりの頃は、ひと飛びするたびに轟々と旋風を吹き散らし、危なっかしいばかりだったが――いまでは風を手足のように操り、すっかりこちらの流儀にも慣れているようだった。
 幻想郷での暮らしは、風祝の名に恥じぬだけの実力を身につけさせているらしい。
「よ、邪魔してるぜ」
「あ。霊夢さん、魔理沙さん。こんにちわ」
「お帰り早苗。今日も御苦労さま」
 鷹揚に迎える神奈子は、早苗がその胸元に抱いた小さな布包みに目をとめ、眉を跳ねさせる。
「……あれ?」
 傍にててっと走り寄った諏訪子も目を丸くしていた。
 早苗がその胸に抱きかかえていたのは、まだ生まれたばかりと見える赤ん坊だった。艶やかな碧髪をした赤子は白い布にくるまれ、すやすやと寝息を立てている。
「早苗、どうしたのその子?」
「どこかで預かってきたのか?」
 揃って赤ん坊の顔を覗きこむ守矢神社の神様たちに、早苗は満面の笑みで答える。
「そうなんです! 聞いてください神奈子様、諏訪子様っ!! 赤ちゃんができました!!」
「「早苗ェーーーーーーっ!?」」
 風祝のご乱心に、二柱の絶叫が境内に響き渡った。


    ◆ ◆ ◆


「さ、さな、さなっ」
「サナトリウム?」
 胸に我が子(自称)を抱いたまま、こくんと可愛らしく首を傾げる早苗に、いやいやいやと二柱は揃って手を振る。
「さ、ささささささ早苗? その、どういうことかな? いやあ、最近めっきり耳が遠くなっていけないねえ!? そ、その子がなんだって?」
「はいっ、赤ちゃんです!!」
「……誰の?」
「わたしのです!!」
 はっきり、きっぱり、爽やかな笑顔で言い切られて。
「……げフっ」
「ああっ、神奈子っ!?」
 なにか神々しい液体を吐きつつ、八坂の軍神はその場にぶっ倒れた。慌ててその身体を抱え起こし、諏訪子は恐る恐る早苗の方を振り向く。
「え、えっと――早苗、冗談だよね?」
「いいえ?」
 何言ってるんですかとばかりに、早苗は胸に抱いた赤子のふくよかな頬をそっと指でつつき、愛おしげにその額に頬を寄せた。整った顔立ち、陽に透ける美しい碧の髪。赤ん坊には確かにはっきりと早苗の面影がある。
 何度もその顔を見比べ、諏訪子はごくりと唾を飲み込んだ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいな早苗さん? 赤ちゃんってそんな簡単に言うけど――ち、父親は?」
「いませんよ?」
「がフッ!?」
 さらりと強烈な事を言われ、倒れ込んだままの神奈子の身体がびくんとのけ反った。
「ああ!? しっかりしろ神奈子、傷は浅いぞっ!?」
「いや……らめぇ……さ……っ、早苗は、そんなこと言わない……っ、言っちゃらめなのぉ……」
 錯乱する神奈子の肩を掴んで、思い切り揺さぶる諏訪子。しかしそんな二柱に追い打ちをかけるように、早苗はぱあっと明るい笑顔で、
「ずうっと頑張ってたんです! お二人をびっくりさせようって思って!」
「あばばばっばばばば……」
「うわ、神奈子っ!? おい、帰ってこいっ、行くな、逝っちゃだめだ、こら、神奈子ーーっ!?」
 威厳もへったくれもなく痙攣し、人語すら発せぬままに泡を吹き始める八坂の軍神。たとえ敬虔な信徒とて、百年の信仰も一目で根こそぎ吹っ飛びそうな有様だった。
 そのまましばらくもがいていた神奈子だが、やがてふつりと糸が切れたように動かなくなる。
「きゅう……」
 やけに乙女チックな倒れ方をする相方の顔を覗きこみ、諏訪子は肩を竦めた。
「……あーうー。神奈子にゃちょっと刺激が強すぎたか……。こんな姿形(なり)しといておぼこいからねえ、この子は……」
 倒れ込んだ神奈子を膝上に寝かせ、諏訪子はそっとその額に濡れた手拭いを載せてやった。
「……本当っぽいわね」
「みたいだな」
 一連のやり取りを蚊帳の外から眺めていた霊夢と魔理沙も、顔を見合せて囁き合う。
 ――と、周りが騒がしくなったからか、不意に早苗の胸に抱えられた赤子が目を覚ました。
「ふぇぇええ……!」
「あらあら、ごめんね、起こしちゃったわね
 元気の良い声で泣き始めた赤ん坊を、早苗はすっかり母性に溢れる仕草でよしよしとあやす。邪気など根こそぎ浄化されそうな、慈母の笑顔だった。
「……んー、お腹すいちゃったのかな?」
 赤ん坊の顔を覗きこんで、早苗はふいと顔を上げ、
「諏訪子さま」
「な、なんでしょうか早苗さん」
 いきなり話を振られて思わず敬語になる神様。早苗はよいしょ、と赤ん坊を胸に抱いたまま立ち上がり、
「私、この子の世話がありますから、少し失礼しますね」
「……う、うん」
「ありがとうございます。……はいはい、すぐにごはんにしましょうね」
 にこにこと赤ん坊に話しかけながら、早苗は襖の奥へと消えてゆく。黙ってそれを見送っていた一同は、閉じた襖の前で一斉に息を吐いた。
「……な、なんか無駄に緊張したぜ」
「あーうー……」
 倒れたままの神奈子を膝の上に、こちらもだいぶ気疲れした様子の諏訪子。やれやれと汗を拭い、魔理沙は二柱の元へ歩み寄る。
「……で、どうするんだ、あれ」
「どうするって、産まれちゃったものはどうしようもないんじゃない?」
「そりゃそうだが」
 あまり動じた様子のない霊夢の隣で、魔理沙は巫女がそれでいいのかと眉をしかめる。
「でも、確かに気になるわね。……誰なのかしら、父親」
 霊夢の疑問はまことに当然のものだったが……


 …………………。
 ………。

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