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はるはる・8

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「時に少年、つかぬ事を聞くが」
 炬燵に入ってミカンを二つ食べ終えて、ぬくぬくとまどろんでいた夕食後のひととき。僕の隣に座った幹也さんは灰皿を引き寄せながら言う。
「そろそろクリスマスだが、なにか予定はあるか?」
「いや、別にこれと言って。ゆゆさんといちゃいちゃして過ごすくらいしか」
「……なるほど。若く燃え滾る青少年らしく実に不健全で結構。ということで金をくれ」
「あげませんてば」
「なに!? ふざけるな貴様!! 何様のつもりだ!!」
「そこは切れるとこじゃないと思いますが。とにかくダメです」
 ぬっと差し出された手のひらを払いのけ、僕は天板の上に頬をくっつける。ひんやりとした板の感触が心地よい。
「第一、幹也さん一応は社会人でしょう。僕にたかってどうするんですか」
「そう言われても無いものは無いからな」
 実に気負いも無く煙を吐き、言い放つ幹也さん。いっそ清々しいほどの開き直りぶりだった。
「まあ聞いてくれ、少年」
「嫌です」
「俺も今年で26だ。……つまりは俺の娘も11歳になるわけだ」
 一応これ以上ないくらいはっきり拒絶したつもりなのだけど、幹也さんは構わずに話し始めていた。概ね僕の意見は無視される方向にあるらしい。
「流石にこうも毎年毎年甲斐性なしのままでいるわけにはイカンと思うのだ。娘のクリスマスにプレゼントひとつ贈れずして何が父親かと。……まあ、つまりは昨日そんなふうに嫁に怒られる夢を見たわけでな」
「はあ……なるほど」
「あんな夢、ここ数年見たこともなかったんだが……最近俺の娘も随分嫁に似てきた気もするんだ。そのせいかもしれん。
 今さらではあるが、少しは真面目にならなきゃマズいと思ったわけさ。朝帰りしてばかりで説得力はないが」
 ロクデナシが服を着て生きているような幹也さんでも、弱いものがあったってことなのだろうか。あんまり詮索したことはないけれど、僕と10歳も違わないのにもうあんなに大きな子供を持つ、と言うのは大変なことだろう。
「――まあそれとは全く関係なく借金がかさんできてな。当てもないし明日までに返さんとやばい。具体的に言うと腎臓とかかたっぽな。なので金をくれ少年」
「嫌です」
 まあ、大体そんな感じに、僕の周りはいつもどおり平和なのかもしれない。


 (続く)

コメント

 大変ご無沙汰いたしております。
 豪腕はりーです。
 この度、約半年ぶりくらいにネット環境へ復帰いたしましたので、ご挨拶に伺いました。
 いやもう、そりゃまた色々とあったわけですが。
 ともあれ、今後とも宜しくお願い申し上げます。
 ちょくちょく遊びに参ります故。

うわぉ、お久しぶりですー

どうもご無沙汰しておりました。
復帰おめでとうございます。しょうもないサイトではありますが、どうかご来訪いただければ嬉しいです。お待ちしてますー
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