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【東方】俺設定語り

 たまには痛々しく、うちの幻想郷の設定とか語るよ!
 なお、初出は2年前の幽明櫻の新刊に出てきたもの。

▼太刀 銘 楼観(名物十夜斬楼観) 拵明星紋払暁
 たち めい ろうかん(めいぶつとおやぎりろうかん) こしらえみょうじょうもんふつぎょう

▼短刀 無銘 伝白楼(迷喰並青楼)
 たんとう むめい でんはくろう(まよいばみならびにせいろう)


 ……というのが自分の中における楼観剣、白楼剣の正式名称ということになっておりまして、それについてのお話。なお適当に資料を眺めながら改変して付けたので、実際の刀剣の名称の規則や作法などはガン無視であります。

 楼観剣のほうは人間に与した妖怪の刀鍛冶が鍛えたもので、魂魄家に伝わる以前に、ある武士が実際にこれで妖怪十匹を一太刀で仕留めたという言い伝えがあり、それが通称になっているという設定。夜=妖怪をまとめて十斬ったので、のちに拵えを夜明けになぞらえたものに改められました。
 元々は馬上で用いることを前提とされていた大太刀で、作られたのは平安末期。刃渡りが四尺七寸(140センチ強)という長大なもので、徒歩で振るうのは相当な規格外であります。妖夢はこれを片手で振るおうとしているわけですが、正直言って無茶です。
 ……もともと楼観剣は長すぎて並の人間には扱えない、とあったので、初稿では実は刃渡りだけで六尺(180センチ)とかになってたんですが、実際に2mくらいの棒を用意して振り回そうとしてみたところそのあまりの長さと重さに驚愕して、妖夢の体格や公式の立ち絵、ドット絵を考慮し40センチほど縮めた経緯があります。

 一方、白楼剣は正式名称が不明で銘もありません。作刀経緯や魂魄家に至る由来も不明で、単に白楼と呼ばれていることが伝えられているため「伝白楼」とされます。
 また、大陸のほうでは「白楼」は「青楼」と並べて、高貴な身分の女性に使える従者の住まいを指すため、青楼という銘の剣と対であったのと推測されており、通称として「並青楼」、あるいは剣自体の性質から「迷いを食う」と頭に付けられることもるという設定です。

 いずれも「刀」ではなく「剣」なので、ゆゆこ様と西行妖の経緯も鑑み、作られたのはどちらも平安末期から遅くとも鎌倉時代の初期。いわゆる伝承的な太刀として、人にあらざるものを斬る事が想定されていた時代の名残を濃く残したものです。
 個人的にはこの二刀がちゃんと対になっていない、というのが、自分の中におけるオサレ高ポイントなのですが、この辺本文で解説しちゃうとあまりにも陳腐だと思い名前だけ載せる事にしましたが、明らかに誰にも伝わってない気がしたのでこの際ここで書いておく事にします。

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寄生獣二次創作ネタ

 思いついたはいいものの形にできる気がしなかったのでメモ書きとして吐き出す。らくがくうpみたいなノリ。
 しかしもう20年も昔の作品なのか……





・あの当時パラサイトとなった寄生獣達の一人、変わり者であった「浅川博史」の話。
・寄生された博史は当時オタクの中学生。享年15歳。
・現在は彼に寄生したパラサイトが戸籍上34歳の「浅川博史」、市役所勤務の公務員として生きている。
・「浅川博史」は部屋にあったアニメ、漫画などから言葉を覚えた。
・彼の両親は博史が寄生された日の前日から一週間の海外旅行で家を離れており、帰宅まで十分に時間があったため、「浅川博史」はそれまでにある程度の常識を身に付けた。
・学習媒体がアニメ、マンガ、ラジオの録音テープであったためか、「浅川博史」は空想や創作物に興味を持った。通常のパラサイトよりも幾分、非現実的な思考に身を浸すことが多い個性を持つ。
・また、身体的特徴として中学生の少年に寄生したため、寄生範囲が成人の個体に比べてやや広い事が挙げられる。右肩にまで広がっている。腕はそのままなので事実上ほとんど意味を持たないが。
・肉体操作は並み。ボディ自体はインドアのオタク少年がそのまま青年になったので、寄生体の中では運動はかなり鈍い方。
・両親が帰宅の日、「浅川博史」は彼らに会えば自分の正体に気付かれると判断し、待ち伏せて喰い殺している。運良く殺害現場が自宅ではなかったため事故扱いとなった。


・「浅川博史」は「田宮良子」(後の「田村玲子」)と知り合いだった。
・正確に言えば、「浅川博史」は彼女と敵対しない珍しいパラサイトであったため、ごく初期に彼女と会話し、いくらかの交流を持っている。
・「田宮良子」が高い知能を持つという特別な個性を持ち、ボディに寄生してからのごく短時間で学習を終え、教師として振舞う事が可能であったという事実は「浅川博史」の人格形成に大きな影響を与えた。
・特に、パラサイトとしては極めて早い時期に各個体の個性や特徴が異なる事を理解していた。
・東福山市役所での攻防を経て、世に潜むパラサイト達は行動をより一層自制させ、その正体を世間に埋没させた。
・あるいは、人間よりもうまく人間になり済ましている奴等もいるかもしれない。
・パラサイトと呼ばれる生物ががどこから来てどこへ行くのか、「浅川博史」はここ10年近くそれに思いを巡らせていた。
・世間的にはもう結婚していないとおかしい歳だが、オタク趣味を建前に独身である。
・「浅川博史」が問題視しているのは、仮に結婚したとして産まれてくる子供は自分の子孫ではないということだ。
・「浅川博史」は「田村玲子(田宮良子)」と「A」の繁殖結果を聞いている。
・パラサイトである自分にも、生存したいという本能がある。しかし交配しても種を遺せないのであればいったい、自分は何のためにいるのか。
・そもそも自分達は何処から来たのか。あの日、自分たちが最初に覚えている記憶は、脳を奪わねばと言う強い焦り。
・そして寄生した直後には「この種を喰い殺せ」と命令が来た。
・この命令は、どうやら人間には聞こえていないらしい。
・子孫を残すため、自分を半分に分けて、他のボディを乗っ取ろうとしてみたが、半分だけではうまくいかず、そもそも首を切り落とした身体に乗り移る事は非常に難しいものだった。
・同じ性別、年代であっても、人間には個人差があり、十年も同じ身体を操作し続けた寄生生物はそのボディの操作に習熟し(言い換えれば慣れてしまい)、他のボディを動かしづらくなる事が判明した。


・あの日、パラサイトが初めて地上に現れて以来、新たにパラサイトの発生は観測されていない。
・あれはどれほどの範囲の現象だったのか。地球という生物圏を確認する限り、自分に類する生命体は存在していない。宇宙からとは思い難い。
・実は日本のある地域にだけの存在だったのか、全世界的なものだったのか。世界中で確認されたという報告もあるが、当時の記録はあまり残っておらず、海外のゴシップサイトに一部そんな噂があったが、定かではないレベル。
・ネットも何もない時代で、さらにもし政府などが積極的に対応していたなら、その記録は個人が調べて分かるような範囲にないかもしれないと「浅川博史」は結論している。
・パラサイトは仲間を識別する「信号」を発するので、実際に海外で確認してみれば分かるかもしれないが、少なくとも「浅川博史」は国外へ出ていない。
・それに、人間の中にも微弱、少数ながら信号を発するものがいること。今では自分の信号を信じられないくらいに弱めてしまっているパラサイト、人間よりも人間らしく振舞うパラサイトも増え、同種が分からなくなっている。


・いつからか、ネットを中心に密かな噂が出回っていた。2012年の12月22日。マヤ暦のカレンダーに合わせて、ひっそりと流れたものだ。古い肉体との決別、新たな時代を前にアセンションを訴えるそれは、末世思想のスピリチュアルのようなものであったが、その実パラサイトたちへの呼びかけだった。
・それには「田村玲子」との交流で至った「浅川博史」の発想が元となっていた。
・パラサイトはもともと、一つの存在ではなかったのかという疑問である。
・訓練を積んだパラサイトは自分の身体を千切り、別々に行動することができる。
・考える筋肉である寄生部分はある程度の大きさがあれば独立して自分で考え、行動できる。しかし分離した部分はやっぱり本来の半分でしかなく、あまり細かくなりすぎると自律もできなくなる。
・行動を律するためにはバラバラに分かれる時に事前に「合言葉」となる指示を決めておく必要があった。「元に戻れ」というように。
・「浅川博史」はそれをさらに考え進め、自分達はかつての思想や思考能力を失った、大きな大きな「何か」の切れ端のように小さな一部ではないのだろうかと言う推論をしたのだ。
・ボディを乗っ取る、分裂させた一部を他の身体に埋め込むなど、自分の子孫を残そうとする実験の中で、「浅川博史」は気付く。これまで自然に一個の個体だと思いこんでいた自分も、もしかしたら大きな自分の一部でしかないのではないか。だからこそ以前の事を、疑問に思う事を答えられないのではないかと。
・そして、バラバラになった自分達には命令が与えられたのだ。すなわち、「人間を脳を乗っ取れ」「この種を喰い殺せ」と。


・「浅川博史」の提案は、はじめ荒唐無稽なものとして受け止められたが、けれど徐々にパラサイトたちの中にも同じことを考えるものが出始めた。
・彼らの中に東福山市の「後藤」を知っていた者たちがいた事。
・そして、20年前、かくしゃくとした初老の老人に寄生したパラサイトが、身体の老化に伴って死んだことが契機となった。
・つまり、現存するパラサイトたちは皆20歳で、寄生した身体は20年歳を取っている。
・寄生が起きて20年。あれから新たなパラサイトが生まれることはなく、彼等は数を減らずばかりだった。
・彼らのボディの中には既に老いを迎えている者たちがいる。パラサイトは人間を健康に保つ術は理解していたが、真の意味での老衰にはまったく為す術を持たなかった。
・おそらくあと50年もすれば、大半のパラサイトたちがボディの老衰によって死ぬのだ。
・パラサイトは目的を失っていた。これまでどおり、人間を食っていればいいというものもいたが、20年を経て彼等はあまりにも人間としてふるまうことに馴染み過ぎ、身に付いた知識が「命令」に従う事の邪魔をした。
・あの最初の「この種を喰い殺せ」以来、命令は一度もない。パラサイトたちが多少人間を喰ったところで、一秒あたりにその数十倍に及ぶ数の人間が生まれてきている。
・彼等の多くは慎重で狡猾で理性的だった。ただ獣のように構わず人を喰い殺していればいいというような、短絡的な個体は、人間達に狩られるか、危険を招くと判断された同族の手によって殺された。大きく数を減らしていたのだ。
・彼らが選んだ結論は、回帰であった。強力な統制信号を出せるパラサイトの元に集まって、その指揮下に入り、人間の身体を捨てて一つの大きな生命体に戻ろうとする試みだ。
・2012年12月22日。示し合わせたその時間、日本のとある海岸に多くのパラサイトが現れ、大きなひとつの生命体となって深い海原へ消えた。


・しかし「浅川博史」はそれには加わらず、遠くからずっと彼らを見ているだけだった。恐らくそこには本当の答えは無いだろうと思っていたから。
・仮に、彼の仮説が正しかったとして。多くのパラサイトが人間との戦いや同士討ち、老衰で失われた今、もし地球上のパラサイトが全て一か所に集まって寄り集まったとしても、かつてのような存在に戻れるとは思えなかったからだ。


・我々はとても弱い。それのみでは生きられない生命体だ。
・だから、あまりいじめるな。
・地球上の誰かが、ふと思った。

紅楼夢5新刊

 無何有の郷の落穂。

紅楼夢5新刊

 どうにか完成しました。いつにも増して気合い入れてみたので、できるだけ多くの人に手に取ってもらえるといいなぁと思います。

【Kanon】姉妹の恋愛方程式

 ▼

 ――この七年目の冬に愛を込めて。




 ▼

「お姉ちゃん、……その、……えっちなことしてみない?」
「前から思ってたけど、あんたって実に馬鹿よね」
 休日の夕刻、夕食の後片付けを終えて読みかけだった小説の続きを片手にソファに腰を下ろす。ようやく落ちついた時にいきなり、なにやら思いつめだ表情で実の妹にそんなトンチキな話題を振られたら、姉としてはまあ妥当な対応だと思う。
「ぇうー……いきなりそんなこと言うなんて酷いですっ」
「自覚症状も無し……深刻ね」
「お姉ちゃんっ!!」
 なで肩を精一杯いからせて栞はうぅーっ、とこちらを睨んでくる。その表情もつくづく子供が拗ねている以外の表現のしようがなく。だからこそ冒頭の質問が実に間の抜けたものであるように思えてしまうのだった。
 ……事実、どう曲解されてもしようのないことである気はする。
「なんなのよ。あんたが妙なこと言いだすのは今に始まったことじゃないけど。今度はなんに影響されたの?」
「……そうじゃなくて……その、今日ね?」
 あたしの妹であるところの美坂栞は、つい半年前まで病院で過ごす時間の方が長いような生活をしていた。家族の一人がいるはずなのにいない、という現実はさまざまな問題をもたらしたものの、紆余曲折を経て今は無事完治し一年遅れの学校生活を謳歌している。
 復学してからは少しずつではあるが友達もでき、クラスにも溶け込んでいるらしい。それは実に微笑ましいことだった。
「それで、どの俳優さんがかっこいいとか、素敵だって話になった時に……祐一さんのこと、喋っちゃって……」
「なるほど。……大体解ったわ」
 まあ、要するに。栞はクラスメイトとのお喋りの中で、不用意にも世間的には秘密ということにしてある彼氏の存在とそれにまつわる様々な状況の情報漏洩に至ってしまったということらしかった。
 こんな田舎町では色恋沙汰がいちばんの話題。まして病弱な少女と上級生の甘いロマンス(栞の言葉を素直に受け取るとこういうイメージらしい)は、格好の題材であるのだろう。
「で、ちょっとのつもりで見栄張ったらどんどん話が大きくなって、いろいろ問い詰められて答えに困って、どうしようか解らなくなってあたしに聞いてみたと、そういうこと?」
「……わ。すごい。なんで分かるの?」
「あんたねぇ……」
 この頭痛は決して幻ではあるまい。
 たまに思うけれど、同じ親から生まれてどうしてこうも違うものか。
「第一、あんた経験なんかあるの?」
「わ……お姉ちゃんが大胆ですっ」
「聞かなきゃしょうがないじゃない。こんなの隠したって仕方ないでしょ。姉妹で」
「えぅ……」
 頬を真っ赤にして俯く栞。やはりどうみてもお子様だ。もっとも、これで明け透けに頷かれでもしようものなら明日徹底的に相沢君を問い詰めてやらねばならないわけなのだが。
「えっと……その、前に……いちど、だけ」
「…………」

 ……………………なんですと?

「で、でも、なんだかその……あんまり覚えてないっていうか、その、よくわからなくて。……あの頃ってもう、いろいろお薬とか多かったし、ほら、痛いとか苦しいとかそういうのわからなかったから……だから、ホントのところはよく解らなくて……
 私が元気になってからは祐一さん、あんまりそういうことはしてくれないし……お姉ちゃんと一緒で受験生だから、邪魔しちゃいけないかなって……き、キスくらいはしてるよ? 時々、だけど……」
「あ、う、うん。いいわよそのへんで。十分解ったから」
 いつの間にか大暴露おのろけ大会になりつつあった栞の衝撃的告白を押しとどめ、あたしは表情を取り繕って内心の動揺を押し殺す。さまざまな理由から必要に迫られて身につけた特技だけど、今日ほどありがたいと思ったことはなかった。
「その、それで………れ、練習……しようかなって思ったんだけど」
「……あのねぇ。だからってどこの世界にそういうことの練習相手に姉妹を選ばなくちゃいけないの。それこそ相沢君に頼めばいいことじゃない」
「だ、ダメダメ絶対ダメっ!! そんな事言ったらなにされちゃうか解らないよぅっ」
 ……とりあえず。
 明日学校に行ったら相沢君とはじっくり話し合う必要がありそうだった。
「あ、あのさ、お姉ちゃん」
「なによ」
「その、お姉ちゃん……経験、あるんだ?」
 様々な葛藤に思いを巡らせているうち、栞はあたしの様子を余裕と誤解したらしい。実に失礼な――いや、そうでもないのだろうか。とにかく近年あまり見なかった、姉を尊敬する視線でこちらを見つめてくる。
 となれば、あたしとしても採るべき選択肢は当然狭まれてしまうわけで。


    1.素直に誤解だという
 こア 2.しらばっくれる


「まあね」
 さらりと嘘。決して弱みを見せず、常に上の立場にあると思わせるのが上手な妹のしつけ方であり、良き姉であり続ける秘訣なのだ。
「ええと……」
「相手は誰、なんてつまらないこと聞くならこれ以上相談乗ってあげないわよ。家族だってプライバシーくらい守って欲しいから」
「えぅ……なんだかさっきと言ってることが逆……」
「もういいのね?」
「え? ち、違うよぅっ!! その、そうじゃなくてっ」
 どうも聞く気満々だったらしい。まあいいけど。
 栞はもごもごとつぶやきながら、じゃあ、と話題を変えてきた。
「……どう…だった? ……その、する前と、しちゃった、後で……」
「別に。したしないで何か変わるものじゃないわ。実際、あんたのクラスにだって他に経験済みの子はいるでしょ。でも普通に話してて何か違うところってある?」
「えっと、それは……」
「そんなものよ。栞が思ってるほど大したことじゃないわ」
 あくまで想像ではあるのだが、栞はそれで納得したらしかった。
 未経験者に諭される妹は、実は自分の方がずっとオトナであるなどということに微塵も気付いていない模様。
 ……それにしても、まさかこんなお子様な妹に先を越されてしまうのは姉としてやや忸怩たるものを感じないではない。世間も見る目がないものだと思う。
「それにしても、なんで練習なんて馬鹿なこと思いついたわけ?」
「ば、馬鹿かなぁ……」
「そうよ。相手のいることなのに、勝手に一人でどうこうするものじゃないでしょ。大体、本当にしたい相手以外とそういうことして何とも思わないの?」
「でもでもっ、いざその時になって、上手くできなかったら困るよっ!!」
「…………」
 ……何と言うか。
 ああ、愛すべき愚かな妹よ。天よ、どうかこの者の振る舞いを許し給え。あたしは胸のうちで十字を切るジェスチャーを思い描きつつ身体を起こした。
 台所まで戻り、冷蔵庫からフルーツのタルトを取り出して切り分け、テーブルに戻る。
 無論、栞の分まで用意するような余裕はない。
「お姉ちゃん、そんなの食べたら太っちゃうよ?」
「いいのよ」
 何か食べねばやっていられない気分だった。
 広げっぱなしの小説を閉じ、ふぅ、と吐息。この話題、いつまで続けなきゃいけないんだろう。
「どこまで話したかしら。……とにかく、初めての相手がいかにも場慣れしてるのはそれはそれで問題だと思うわよ」
「そうかなぁ……」
「そうよ。妄想逞しくしてるあんたは違うかもしれないけど」
「妄想……って、そんなことないですっ!!」
「じゃあ、明日までにベッドの下とクローゼットの裏の本は処分しておきなさいね。どこで買ってきたの、あんなの?」
「うぅ……お姉ちゃんが酷いよぉ……」
 この辺りは個人差だろうが。少なくとも私は、他の誰かで積んだ経験を自分の初めてに持ち込まれたらいい気分ではないだろう。男の心理状態なんて想像しかできないけれど、その辺りがまったくどうでもいいとするならば処女信仰なんてものは世の歴史に存在するまい。
 恋愛とか愛情というものが、相手にとっての自分が特別であることを前提とする感情ならば。そこに他の誰かの影が覗くことは百害あって一利なしだ。
 ……まあ、最近のドラマにせよマンガにせよ、ヒロインをエスコートする相手役はえらく熟達していることが多いわけなのだが。ああいう相手に抱かれて何が幸せなのかはいまいち良く解らない。
 緊張してだめになってしまうくらいのほうが、よほど嬉しい……の、ではないかと思う。
「……とにかく。そんなことで思い悩んでるようじゃまだまだお子様ってことね。ほれ」
「ひゃうっ?!」
 栞の頬にサクランボをおしつけた。
 可愛い悲鳴をあげる栞の口の中に、ぽいとそれを放りこむ。
「ま、あんたはそれでも使って練習してなさい。上手になれば相沢君も喜んでくれるでしょ」
「ん、んぅ……」
 誰が言い出したのか、舌で結べるならばキスが上手い、という俗説。
 まあ、チェリー同然なのだから(多分、だが)、きっとそちらにもご利益はあるのだろう。
 何を想像したのか知らないが、真っ赤になっている栞をよそに、私は残るタルトを切り分けて口に運んだ。



(終)






 達観した大人なふりをしつつ、実は妹さんよりも遥かに夢見る乙女な香里さんというテーマのお話。とりあえず冒頭のシーンだけ思いついて書き始めたら思いのほか簡単にまとまりましたとさ。
 正直栞がえうえう言い過ぎてるような気もしないでもないけど、
 尽きることなきエロゲーの論議のなかに、登場するヒロインが未経験であるかどうかについての是非を問うものがありますが、詳しく話しだすと止まらないので一石を投じることもなくチキンに終了。
 たとえゲームといえども愛と独占欲は紙一重。難しい問題でございますな。
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